マスコミも注目した本会議質問 2016年9月15日
テーマは、❶アジア競技大会の招致について、❷本市発注工事における下請業者への代金未払い問題について、の二つです。 壇上での質問は次の通りです。翌日の新聞がとりあげてくれました。中日が未払い問題、読売がアジア大会。併せてごらんください。
2016年9月議会 質問 2016年9月15日 山口
通告に従い、アジア競技大会の招致について、まず質問します。
2026年開催予定の第20回アジア競技大会の招致をめぐる事態が揺れています。
5月11日、愛知県と名古屋市は共催で開催都市に立候補表明しましたが、9月5日、河村市長は「OCAに提出する立候補意思表明書の一部である開催構想バージョン2に大会全体経費と県市負担割合が掲載されず、市民や議会への説明責任を果たすことができない」として立候補取り下げを表明。
すると翌日、大村知事は、大会全体経費850億円、県市負担割合2:1などの本市提案の丸呑みを表明。しかし市長は、さらに検討して判断する、としました。
9月13日、JOC理事会が開かれました。県と市は、9月25日に予定されているOCA総会までに共催の正式表明を行うため最善を尽くす、と表明。JOC理事会は、愛知・名古屋を国内候補都市に承認しました。ただし、愛知県及び名古屋市の共催成立という条件付きです。結局、いま、どういう段階なのか?
一連の混乱を招いた根底には、大会の招致が、県民市民の議論を置き去りにしたまま、首長主導ですすめられてきたことがあります。
遅きに失したとはいえ、いったん立ち止まって考えることは、きわめて常識にかなう妥当な判断だ、と私は考えます。
そもそもOCA憲章では、開催都市の決定について「OCA総会はできるだけ最低8年前までに、開催地を決定する」としています。10年前のいま、あわてて決める必要があるのでしょうか。他にライバルとなる都市も見当たらず、むしろ開催都市を探すのに苦労しているのが現実ではありませんか。
開催都市の決定方法も、複数の立候補都市から選挙するオープン・ビット方式から、あなたの都市(まち)で開催してくれませんか、とOCAから勧誘するインビテーション方式に変更されたと聞きました。だったらなおさらです。
なぜいま、立候補を急ぐ必要があるのか? なぜ2年後=開催8年前ではいけないのか? 開催都市の決定時期や方法に関する正確な情報と今後の見通しについて、総務局長に答弁を求めます。
そもそもアジア競技大会とはなにか。大会を主催するアジア・オリンピック評議会(OCA)は、「スポーツの公正な競争を通じ、スポーツ、文化、アジアの若者のための教育の発展および道徳的、身体的な能力の発達を助け、国際的な尊敬、友情、親善、平和および環境の促進に寄与する」を根本原則としています。
「スポーツを通じて国際平和と友好を促進する」というオリンピック精神をアジアにおいて体現するアジア競技大会には大きな意義があります。
リオ五輪では、新たな試みとして「難民選手団」の活躍が話題になりました。
OCA本部はクエートにあります。アジアは広い。いまなお混乱が続く中東諸国を含むアジア地域で、国や民族、宗教や人種、政治体制のちがいをこえてアスリートが交流する。そのこと自体にたいへんな価値がありますが、多くの困難も予想され、開催には相当の覚悟も必要です。
またスポーツ基本法では、「スポーツは世界共通の人類の文化である」と宣言し、スポーツの国際的な交流が国際平和にも大きく貢献する、と述べています。スポーツはすべての人々の権利であり、全ての国民が日常的にスポーツに親しみ、楽しむ機会を確保すること、を国や地方公共団体に求めています。
国際大会の開催が、地域スポーツの振興をはじめ、スポーツの多面的な発展に寄与することを、私は心から願うものです。
ところが、大会の招致について、スポーツ施策を担当する教育委員会の姿が見えません。スポーツの発展よりも政治や経済の都合が優先されていませんか?
アジア競技大会の開催で、スポーツの多面的な発展とアジアの平和にどう貢献するのか? 大会に臨む基本姿勢について副市長に答弁を求めます。
大会の成功には、市民の支持と理解が不可欠です。そのためには、大会への取り組みが、市民生活や環境と調和のとれた、開催都市にとって無理のないものであることが必要です。
オリンピックを招致した東京都では、知事選の争点にもなったように、際限のない負担拡大と不透明な財政運営が大問題となっています。
現時点で明らかな東京都の負担総額は3500億円を超え、立候補ファイルで示された1538億円の2.3倍に膨らんでいます。さらなる負担を求める動きもあり、こうした事態が東京都の施策に財政的影響をもたらせば、五輪への都民の支持も損ないかねない、と危惧されています。
東京を教訓に、立候補してから考える、ではなく、立候補の前段階で、市民や議会へきちんと説明し、開催への理解と合意を得ることが必要です。
それでは市民や議会には何を説明し理解を得るのか? 大会に関わる事業総額や県市の負担割合はもちろん、大会運営組織への関与、競技施設の改修、選手村の後利用計画、国や企業の費用負担を含む協力体制、そして負担が膨らむことへの予防措置など、はっきりさせるべきですが、副市長の答弁を求めます。
次に、本市発注工事における下請業者への代金未払い問題について、財政局長に質問します。
名古屋市発注の事業で、下請け業者への代金未払いが起きています。いま被害者同士が連絡を取り合い、泣き寝入りしてたまるか、とがんばっています。
問題になっているのは中区に本社があるK社。この会社が受注したのは、守山生涯学習センター外壁改修工事、守西ポンプ所建物整備工事、東山線ホーム可動柵関連工事など6件、受注総額は約7500万円。
未払い金額は、生涯学習センターやポンプ所工事でそれぞれ600万円をこえ、左官や塗装など少なくとも9業者、3760万円にのぼります。原材料の納入業者へも180万円未払いです。
被害者からは「私たちは無償で市の建物を造ったことになる」「市が発注した工事だからと信用して仕事を受けた。責任とってくれ」「材料費と人件費は既に払った。工事代金が入金されないと倒産しかねない」と、怒りと不安の声があがっています。
私には痛恨の思いがあります。2年前、名古屋城の緑地を管理する業務委託で同様の事態がおきたのです。市から工事代金を受け取ったまま元請けが、485万円を下請業者に払わぬまま倒産。なんとか救えないのか、と財政福祉委員会でもとりあげましたが、当局は「気の毒だが何もできない」というばかり。結局、泣き寝入りです。
ところが再び、同様の事態が起きました。もはや単なる業者間のトラブルではすみません。発注者としての名古屋市の責任が問われます。中小企業振興基本条例をもつ名古屋市ができることはないのか。以下、質問します。
第一に、市が発注した工事や委託事業で、下請けへの未払いが起き、業者が苦しんでいます。この事実関係を把握していますか? 発注者としての責任を感じませんか? 財政局長の認識をお聞きします。
第二に、どのような対策を立てるか?です。
長崎県では5年前に、下請代金等の未払いを行った者の入札参加を規制する制度をつくりました。未払いの相談があれば、元請けが未払いの事実を否認しても、入札参加を規制できる仕組みを設けました。その気にならばやれることはいくつもある。四つ提案します。
一つ、元請けから下請けへの代金支払い状況を確認すること
二つ、下請代金の未払いを確認したら速やかに元請けに支払いを命ずること
三つ、それでも払われない場合、緊急措置として市として代金を立替え、その代金を市から元請けに請求すること
四つ、下請代金未払い企業に対して、入札参加をきびしく制限すること
以上、答弁を求めます。
最後に抜本的な予防策についてです。公共事業や業務委託などの公契約について、業務の質を確保し、公契約の社会的な価値を高めることが必要です。
今年に入り、愛知県や豊橋市であいつぎ公契約条例が制定されました。また豊田市では5年前に「豊田市公契約基本方針」を定めています。いずれも公共事業や業務委託で働く労働者に一定以上の賃金を支払うことなどを受注企業に求めています。豊田市は企業の姿勢を入札時の評価に反映させるとしています。
しかし各地の公契約条例では、労働者の保護はうたわれていますが、下請けの中小零細業者は保護の対象となっていません。本市では、この点も考慮にいれた公契約についての新たな仕組みが必要です。
名古屋市の仕事を受注するのなら、労働者はもちろん、下請け、孫請けまで大切にしていることをしっかり確認して契約する。受注企業の信用も、名古屋市への信頼も高まり、働く人も下請業者も安心してよい仕事ができる、一石三鳥の効果が期待できます。
名古屋市においても、公契約に関する新たな仕組みをつくりませんか?
以上、答弁を求めて第一回目の質問を終わります。